金色のウサギの話ある日僕は原っぱで金色のウサギを見つけた。その日は夏休みで最初の水曜日。僕は虫取りの最中だった。 僕は金色のウサギにゆっくりと近づいてみた。金色のウサギは真っ赤な瞳で僕を見つめていた。 僕はたちまち、その瞳の虜になった。 金色のウサギを抱き上げる。僕は金色のウサギを家につれて帰って飼うことにした。 金色のウサギをギィと名付けた。僕とギィは一緒にたくさん遊んだ。 僕の家は父さんも母さんも働きに出ていて、帰りはいつも夜遅くだった。 僕は父さんと母さんの帰りを待っている間、ギィにたくさんのことを話した。中には父さんと母さんに聞いて欲しい事もあった。 ギィは僕の話をずっと聞いてくれて、時には励ましてくれた。 ギィと二人なら僕は寂しくはなかった。 とにかく、僕とギィはいつも一緒だった。 夏休みの最後の日曜日。お父さんとお母さんは珍しく二人とも休みをとって、僕を遊園地につれて行ってくれた。 僕はとても嬉しかった。遊園地はとても楽しくて、父さんと母さんはとても優しかった。 父さんも母さんも僕もみんな笑っていた。 その日の帰りは、道路がとても渋滞していて帰りがとても遅くなってしまった。 車の中で眠ってしまった僕は、母さんに起こされて車を降りた。 ギィに今日の土産話をたくさん話してあげようと思った。 嬉々としてドアを開けると、部屋の中にはギィが居た。 金色のウサギは死んでいた。 寂しくなって死んでいた。 金色のウサギはもういない。 完。 |